自然科学には数多くの分野が存在しますが、その中で数学は極めて特殊な立ち位置にあるといえます。
他の分野、例えば物理や生物、化学などでは、まず現実の中に対象があり、それらを観察し、仮説を立て、実験を行い、結果を考察し仮説の正しさを検証します。
対照的に数学は、はじめから自然に概念が存在している、というわけではありません。
そこに存在する概念の一つ一つが、紙とペンの上、もしくは頭の中だけで生成されてきました。
そこに在るものを発見するというよりは、全てを人間が作りだしてきた学問といっていいでしょう。

全てが人の手によるゆえの数学の精巧さが、その面白さと美しさの根底を成していると私は思っています。
習慣的に数学の勉強を続けていると、ややもすれば機械的な処理と解法の暗記に終始してしまうことがあります。
しかし数学は本来とても楽しい学問です。
みなさんには、大学受験という恵まれた機会を通して、体系としての数学の美しさ、一つ一つの問題の興味深さをお伝えできれば幸いです。