グノーブルの物理
-探求の歴史を追体験できる授業。入試では満点解答を目指せます-
クラスレベルの違いについて
ν(ニュー)レベルとαレベルは、難易度によるクラス分けではありません。カリキュラム自体が全く異なり、自分の興味や学習状況によってどちらかを選択受講できます。
Q:グノーブルの物理は従来、高校2年生の夏期講習からの開講でしたが、2019年からは2年生の春期講習から開講することになりました。
グノーブルの物理ではνレベルとαレベルというふたつのレベルがありますが、そのうちのνレベルのほうは高校2年生の春期講習から始まるようにカリキュラムを改訂しました。
部活や学校行事で忙しく、科目を増やすのが厳しいという生徒には、夏から始まるαレベルをお勧めしていますが、先行して高校2年生のスタートから本格的に受験勉強を始めていこうという生徒には、是非νレベルに参加してほしいと思います。
Q:νレベルとαレベルの違いを教えてください。
このふたつのレベルは、受講生の習熟度や扱う問題の難易度によって分けている訳ではありません。どちらも、いわゆる「高校物理」の学習を前提にせず、ゼロベースでスタートするカリキュラムになっています。ですので、物理を学んだことがないという生徒でも参加することができます。
αレベルの授業では歴史的な物理実験や科学者のたどった推論を元にしたグノーブルオリジナルの教材を題材にしています。当時の科学者たちが何を見て、どう発見してきたかを追体験しながら理解を深めていくカリキュラムになっています。
一方、νレベルの授業では入試問題を題材にしています。αレベルの精神を持ちつつも、入試問題の枠組みから逸脱することは(あまり)ありません。入試問題を扱いますが、大量に問題演習して解き方に慣れるというような学び方ではなく、厳選された問題を掘り下げながら物理法則の理解を深めていくカリキュラムです。
Q:それぞれどのような生徒が対象なのでしょうか。
受講者の自然科学に関する関心・探究心が大きく関わってきます。αレベルのほうは、自然科学に対する探求心を持っている生徒さんにぴったりです。あるいは探究心を持っていたにも関わらず、高校になってからその楽しさを見失ったように感じている生徒さんにもお勧めです。
νレベルのほうは、学校などで物理を学ぶ中で、現状で少し物理に不安や苦手意識を感じている生徒さんに受講を勧めています。
αレベルの学習内容について
物理の法則を発見の順序に沿って学べます。科学の醍醐味をストレートにお伝えします。
Q:まずαレベルの授業内容について教えてください。
そもそもどうして自然科学が生まれたのかということを考えてみますと、様々な要因があると思いますが、中でも純粋に真実の姿を知りたいという知的欲求があると思います。
これまで知らなかったことを知る、あるいは、その裏にある仕組みを発見する・理解することは皆、楽しく感じるものです。物理の場合も、光や音、熱などといった身近にある現象から天体の運動など、森羅万象に対して妄想を膨らませていきます。
しかし物理分野では、今知られていることは一体何かということを知らずに、独自により深い理解を得ることはなかなか難しくなっています。ニュートンがフックに宛てた書簡の中に、”If I have seen further it is by standing on the shoulders of Giants.”「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。」という一節があります。先人の積み重ねた発見があってこそ、その先へ一歩進んでいけるのです。
そこで、物理を学ぶときのひとつの方法として、現在の知識体系がどのようなものかを整理された形で紹介し、それがどのようなものなのか、理論・法則を適用しながら理解していくという方法があります。
例えば、ニュートンの運動の法則というものがあって、その法則から導かれることはこうで……といったように演繹的に理解をしていく方法です。大学入試の世界においては、与えられた問題に対して短時間で正解を導くことが要求されていますから、このような学習方法がとられることは当然と言えるかもしれません。
ところが、この方法で学んだ場合は、どのような法則にしたがって考えてゆけばよいのか、問題が与えられるという環境の中でしか判断がきかなくなってしまいます。(それだけでなく、これは教える側の怠慢でもありますが)公式だけを覚えてそれを使えるようにすることが物理の勉強だと考えてしまう人も出てきているようです。
小学校の時は理科が大好きだったのに中学、高校と学年が上がるにつれて科学に対する興味を失ってしまうという話もよく耳にします。もしかすると「公式の暗記」のようなことが一部の教育現場で起こっているのかもしれません。これでは理科が楽しくなくなったと感じてしまうのも当然ですよね。
グノーブルの物理では、これとは異なる学びを提供しています。未来をたくましく切り拓いていく生徒たちにとって、一体どのような学びが必要なのか。それは、演繹的に既成の理論を適用するのではなく、様々な具体的な事象について検討し、結果として法則を見出すという帰納的な学びだろうと思います。そこで先人の科学者たちの心を惹きつけた題材を用いれば、私たちだって同じような好奇心を抱くに違いありません。そのために、過去の科学者がたどった推論や実験などを題材にしているのです。αレベルでは、デカルトやニュートンたちが何を前提に、どのような関心を持ち、世の中の常識をどう打ち破っていったのかをストレートにお伝えしています。
時代背景の理解も必要です。例えば、大航海時代という時代の中では、大海原で正確な位置を知ることが求められますが、現在のようにGPSがあるわけではありません。一体どうしたらよいか。考えてもらう訳です。そうすると、時間を正確に測ることができれば良いのではないかというひとつの結論に至ります。さて、では正確な時刻を知るためにはどうしたらよいか。ここで先人の見つけた素晴らしい方法を紹介していきます。
Q:そうすると、科学史を学ぶような授業なのでしょうか。
歴史そのものを追っていくのが目的ではありませんが、考え方の根本を知るために、グノーブルではあえて「物理の歴史」を活用しています。なぜ歴史なのか。歴史を追うと、「なぜそう考えたか」が必然的に理解できるので、自分で容易に再現できるようになります。歴史からのアプローチは遠回りに見えて、むしろ合理的なのです。
また、同時代の科学者やそれ以前の科学者がどのようにのちの科学者の考えに影響を与えたのかということを知ると、そこに至る考え方の道筋を理解することができるようになっていきます。
テキストの最初のページではそのテキストに登場する学者が活躍した時代を年表で紹介していて、当時の社会的な背景を学びます。さらに学者の中からひとりをピックアップして著書の言葉を入れています。彼らが発見したときどれだけ興奮したのか、どれくらい戸惑っていたのか、あるいはどれだけ間違えて考えていたのかを、リアリティを持って知ってほしいと思っています。そして、それはこれからの新しい一歩を踏み出す子どもたちにとって、きっと何かの役に立つはずだからです。
Q:伺っているだけで楽しそうな授業ですね。
グノーブルの物理を受けた生徒からは「やっぱり理科って面白い」と言ってもらえることが多くあります。「大学で物理を専攻したくなった」という卒業生が何人もいました。それは、学者たちがどのような問題意識を持ち、どのように解釈して「自然」に迫っていったかがきちんと伝わっているからだと思います。生徒たちは科学的な驚きに飢えていたのではないでしょうか。
また、歴史的な流れに沿って学ぶことで、自然と知識が体系化されていくことを実感してもらえているようです。先人たちの驚くべき着想によって他の現象が推察できるようになったり、今まで別個の事柄であると思っていたことが、共通のルール(物理法則)によって動いているのだと知ることは科学の醍醐味のひとつです。
このことを私たちが気づかせるのではなく、生徒たちが自ら気づいていくことで、「理科」の楽しさを味わってくれているのだなと感じることがあります。伸び盛りの生徒たちは1を聞いて10を思いつくので、必ずしもすべてを手取り足取り教える必要はなく、いかに気持ちに火をつけるかのほうが大切なのです。
もちろん、そのためには教える私たちのほうの気持ちに火がついていなくてはなりません。自分は答えを知っているから先生をやっているだけで、物理という学問にわくわくすることもなく、追究する熱意も失っている、というのでは成り立ちません。
Q:大学受験の勉強を超えるような内容も学習するのでしょうか。
授業ではたくさんの具体的な問題、事例を紹介していくので、時にはそうしたことが含まれることがあります。例えば、ノーベル賞論文にある実験なども扱います。多くの事象、実験、問題を経て、確かな物理的思考力を育んでいくというのがねらいです。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、大学の講義を先取りするためにお話ししている訳ではないということです。先取り学習をさせたいということではなく、必然的に話さざるを得ないことについては、教科書の範囲を逸脱する内容であっても議論を避けずに紹介するということです。
Q:実際の大学入試の中ではどのように活かされるのでしょうか。
αレベルは高校2年生の夏期講習から始まりますが、このような授業を1年間受講していただくと非常にたくましい受験生に成長します。高校3年生の9月から始まるテスト演習では、未見の問題であっても、たじろぐことなくこれまでに培ってきた推察力によって見事に突破していってくれます。
例えば、東大の入試問題を解くには受験生なら誰でも知っているような法則しか必要ありません。ただ、見たこともないような状況の問題なので、どの法則をいつ使えばいいのか、筋道を立てて考えなくてはなりません。グノーブルの生徒はこういった問題に大変強いです。彼らは、歴史的な実験を通して法則を体得していますから、どのように解決していくべきか科学者の視点に立って解決の糸口を探っていきます。この視点は、出題をする側の研究者の視点でもあります。こうしたことは東大に限らず、国立大学全般に共通して言えることです。
公式を頭に詰め込んでいれば、高校の定期試験は対応できるでしょうが、このような大学入試で成果を出すのは難しいのです。公式にあてはめるのではなく、自分で公式を導くほどの力があれば、物理は満点解答ができても不思議ではありません。グノーブルの物理は、東大であれ東工大であれ、満点解答を目指す授業です。考え方を知っていれば、満点がとれてあたりまえだと私たちは考えています。
νレベルの学習内容について
題材となるのはあくまで入試問題。厳選された問題を深く掘り下げながら物理の法則を考えていきます。
Q:νレベルのほうはどのような内容でしょうか。
基本的にはαレベルのスピリッツと同じなのですが、題材が入試問題であるためその枠外へ飛び越えた議論は控えめになっています。しかし、こちらのレベルでも生徒が持つ興味、関心ごとに応じて話題を選ぶようにしています。
また、入試問題の中でも、大学の先生方が受験生に対してこういう勉強をしてほしいんだというメッセージ性を感じる問題を多く取り入れています。このような問題は定型と言われる問題ではないものが多く、教科書や参考書の勉強などではなかなか出合えないものです。
これらの問題を、αレベルと同様に、歴史的な順序で学べるように配列していますので、物理の中で登場する概念がなぜ必要なのかを理解しながら進めていくことができます。
Q:実際の授業はどのように進んでいくのででしょうか。
ひとつの問題について、そこではじめて登場する物理量の必要性や定義する動機についてお話するところから始まります。
例えば、運動量の授業ですと、運動量という量を定義する動機はどこにあるのかというところから始めます。皆さんに100円玉や1円玉を出してもらって、実際にぶつけてもらうんです。そうすると、100円玉同士で衝突させるのと、100円玉に1円玉を衝突させるのでは衝突の様子が異なることに気づきます。さて、これを理論化するにはどうしたらよいか、実際の入試問題も利用しながら授業の中でひとつの結論に至るように議論を進めていきます。
また、テキストごとのテーマについてもかなり注意して配列しています。高校2年生の4~7月では、運動量の概念から力をどのように捉えるべきかを考えたり、ケプラーの発見から万有引力、静電気力へと話が移り、私たちが生活するときに感じる重力と地球と月の引き合う万有引力との関係から球対称な電場と一様な電場の違いを考えてみる。各テキストが関連し合っています。また、力学、電磁気学という区別をつけて学ぶのではなく、縦横的にお話しています。それは、やはり歴史的な流れを汲んでのことなのです。
授業の対話の中で「こういうことだったのか!」と気づき、自分でまとめたくなるような授業を目指しています。ひとつひとつの定義を覚えることは必要なのですが、それらを羅列してひとつずつ暗記していくということではなく、当然そのような定義がほしいよねということを納得しながら進めていきますので、定義を忘れることがなくなります。
Q:αレベルに比べるとνレベルは入門的な内容なのでしょうか。
νレベルは決して難易度的に易しい訳ではありません。最終的に目指す大学もαと違いはありません。
高校3年生の9月以降はどちらのレベルも同じ問題でテスト演習を行います。それまでの期間について、扱う題材が受験の枠を超えた物理の発見の歴史を追うのがαレベル、入試問題の枠内で進めるのがνレベルです。
Q:宿題はどのくらい出るのでしようか?
αレベルとνレベルのどちらも、1週間に1題だけ20~30分程度で取り組める「確認問題」という宿題を課しています。記述問題が中心なので、翌週の授業時に提出してもらい、添削して返します。
この問題を解くためには、授業の復習が必要になります。復習では、授業内容を友達や家族の人に説明できるようになることが目標です。
物理に限った話ではありませんが、授業を受けただけでは知識や技術は身につきません。授業を再現できるように、講義内容を復習することをお願いしています。これには、授業時間プラス1時間程度の時間がかかるでしょう。
さらにこの復習の中で、わかっているつもりになっていた箇所が洗い出せれば大成功です。翌週の授業で、どんどん質問して解決してほしいと思います。
物理を学び始める時期
時間ばかり長くても密度が濃くないと多くのものは得られません。
Q:高校2年生以前で物理が開講していないのはなぜでしょうか。
本格的な物理の勉強を開始する時期として、高校2年生からがちょうど良いのではないかと考えています。
それまでは部活や学校行事が忙しくなかなか理科の勉強にまで手が回らないのではないでしょうか。たとえ時間的な余裕があったとしても、高校1年生からではかえって長すぎるように思います。時間ばかりあっても密度が濃くないと多くのものは得られません。
それに、高校1年生までは、基幹科目である英語・数学・国語の土台を固めてほしいという思いもあります。高校2年生、3年生になって理科の学習にしっかりと時間をあてることができるのは、ある程度英語や数学、国語の学習が進んでいて、勉強方法も確立しているという方が多いように感じます。
また、数学的な素養が必要な部分があります。ただし、グノーブルの物理では難解な数学を使うことはほとんどありません。このあたりはかなり誤解されているところですが、微分積分を学んでいないと、物理が理解できないのではないかというお問い合わせを受けることがしばしばあります。
たしかに、物理を理解する上で微分や積分の概念は重要なものですが、計算していくために必要な技術という意味で重要だということではありません。積分とはどういうことなのか、微分とはどういうことなのかを理解することが大切なのであって、微積分の計算結果がどうであるとかいうのは二の次のことです。
例えば、私たちが地球上で暮らしているときに、地球の丸みは無視していますが、まさにこれが地球上の一点の周りで微分を見ているということになります。まっすぐな世界しか見ないということですね。そうすると、これは数学的に言えば1次関数として捉えるということですから、比例関係を正しく捉えることが必要だということになります。つまり基本的な比例関係がわかっているかどうかが、物理を学ぶ上で鍵になるということです。
とはいえ、そもそも微分や積分を知らなければ、物理でお話ししたときに実はそういうことだったのか、と感じにくいと思いますので、やはりひと通りの数学、特に文系範囲の数ⅠA・ⅡBに関しては既習であることが望ましいと思います。
受講前に身につけておきたいこと
身近なことが今学んでいる物理や数学と結びついた時の感動を経験することは、本当に大切です。
Q:物理を受講する前段階で身につけておきたいことはありますか。
勉強の点というよりも、日常的なちょっとした経験を大切にしてほしいと思います。
例えば、虫眼鏡で光を集めた経験がないと、「焦点」がなぜ焦げる点なのかは理解しづらく、理科用語として覚えるだけになってしまいます。実感してないものをいくら数式で証明しても、それに続く感動につながりにくいのです。
真っ暗な川辺に行って夜空に瞬く星座を見るとか、最近あまり見なくなってしまいましたが、公園の回旋塔で回って遠心力を感じたりする経験とか。科学者たちもそういうところから出発しているんです。
Q:興味を抱くきっかけとなる体験が大切だということですね。
はい。かつてたまたま飛行機好きの生徒が集まったクラスがあって、飛行機が飛ぶ理屈について、羽の周りで生じる空気の流れに関する話題で議論が盛り上がりました。興味のあることについて話している生徒を核にして、はじめはそうでもなかった周りの生徒たちも、なんだなんだというようになっていきますよね。
Q:先ほどのお話しにもあった気持ちに火がつく瞬間ですね。
科学博物館などによく置いてあるサイクロイドの斜面というものがあります。物体が最速で落下することができる斜面の形状のことですが、その性質についてちょっと話をしたらどういうことなのか数学的に証明してみたいという生徒たちが集まって、退館ぎりぎりの時間まで残って、黒板いっぱいに計算をしていたこともありました。
身近なことが今学んでいる物理や数学といったことと結びついたときの感動を経験するというのは、本当に大切だと思います。
これからグノーブルで学ぼうと考えている皆さんへ
すぐにわかることを求めるのではなく、わからないことを唸りながらも考える経験を積んでほしいと思います。
Q:最後に、これから学ぼうとする生徒へメッセージをお願いします。
グノーブルの物理では、受験に必要だからといって頭ごなしに知識を与えるようなことはしません。
そもそも、現実の事象、問題には必ずしも明快な答えがあるわけではありません。そのことを生徒には物理という学問を通じて理解していただきたいと思うのです。将来皆さんが目の当たりにする問題も同じように正解がひとつではない問題が多いはずだと思います。
しかし現実には、ひとまずあるひとつの解決を導かなければなりません。このようなときに、前提とするものは何なのか、問題の要素は何なのか、様々な側面から検討しながら問題を解決していく過程で、物理的思考が役立っていくのです。
さらには、ガリレオが持ったように、世間的に最適解に達していると思われることに対しても問題意識を持つことは大切です。誰もが当然と思っている中で、「いや、しかしそこには問題があるのだ」と捉える問題抽出力は、今の社会で最も必要とされる力のひとつでしょう。
ですから、グノーブルで物理を学ぶことで、すぐにわかることを求めるのではなく、わからないことを唸りながらも考える経験を積んでほしいと思います。そして、その過程を楽しめる力を持ってほしいですね。